目次
EGFとは?
EGF(Epidermal Growth Factor)とは
人間の上皮細胞を再生する因子のことです。
EGFは
やけどによる皮膚移植や角膜切開で生じる創傷の回復促進などの目的に
医療分野で広範囲に及び利用され、これまでは1g辺り8000万円もするほどの高額な成分となっていました。
ただし
ここ最近EGFはバイオ技術により生成されるようになり
生産が増えてきているため、皆さんのお手元にヒト幹細胞培養液やコスメ商品として届いていることもあるかなと思います。
EGFは実はノーベル賞受賞成分
EGFはアメリカの生化学者スタンレー・コーエン博士によって発見されて
1986年には、ノーベル医学生理学賞を受賞しております。

今やEGFをお肌に補うことで
新しい皮膚細胞を自分のものにすることができるため、長い年月をかけて皆さんに使われるようになったのです・
EGFは20歳の後半から急速に下降
コーエン博士が
EGFを発見した当初は火傷を負ったお肌の修復を目的とし
皮膚再生医療のフィールドにおいて取り扱われているのみでした。
そして
有用性がさらに評価されて
美容・医療界で薬剤にしたり
コスメの成分として採用されるようになったのはここ最近のことです。
10歳代の頃はわずかばかりの傷が手、足や顔にできたとしても
2~3日程度後にはくっきりと治癒してしまいます。
しかしながら
EGFの低下が急速に進みだす20代後半からはお肌の再生能力がガクンと下がります。
その結果
お肌のくすみ、クマ、ハリ、潤いを失って、小じわ、たるみ、シミといった肌トラブルに見舞われやすくなります。
若さが溢れる美しい肌は約28日の周期で生まれ変わります。
このことをターンオーバーと呼びます。
しかしながら
加齢が原因でEGFが減少することにより
ベースにある肌細胞は新しい細胞の再生をおこたってしまいます。
さらには
肌細胞の根本となる細胞が誕生してこない状態となってきます。
そこで
EGFは表皮にある細胞に作用して、新しい細胞の成長と増殖にキーポイントとなる役目を果たしてくれるのです。
人はEGFをそもそも保有している
EGFは、人間のカラダが元々保有している成分で
体内で53個のアミノ酸から生み出されるたんぱく質の1つです。
ほとんど認知されていませんが
お肌以外にも唾液、母乳などにも含有されているのです。
お肌の外層(角質層)には、EGFを感知するための受容体が備わっております。
先述したようにお肌は
ターンオーバーにより、細胞の再生をしております。
その仕組みは基底層で生まれた細胞が
お肌の外層にある角質層へと持ち上げられて垢となって剥がれ落ちいきます。
この周期が約28日間といわれているようです。
しかしながら
強い紫外線などの外的状況やストレスの多いアンバランスになった暮らしを送っていると、このサイクルが異常をきたしてしまいます。
そうして
角質が分厚くなったり、カサカサと乾燥しやすくなるなどの肌トラブルが発生します。
これらのターンオーバーのサイクルを乱さないためには
規則的な生活と肌のお手入れは必要な要素といえるのです。
EGFは細胞の成長を288%アップ
EGFは皮膚細胞の再生を促す成分ですが
具体的に言うと新生細胞の成長を288%良化すると言われています。
アメリカで実施された臨床実験は
EGFを60日間使用し、50歳以上の人でも細胞量が格段に増加したというデータが存在します。
EGFについてはちょっとややこしい話ですが
科学的にみてみるとアミノ酸53個から生み出された分子量は6222のペプチドだそうです。
このアミノ酸の内イオウを含むシステインが6個で
このシステインが3か所でジスルフィド結合を形成して、構造を安定化させます。
また、名古屋市立大学医学部内科では
妊婦尿のウロガストロンという胃酸分泌抑制物質のアミノ酸配列がマウスのEGFとよく似ていることから、消化性潰瘍治療への応用研究もおこなわれています。
このようにEGFは
細胞の成長と増殖の調節に関与する重要な因子の1つであるのです。
EGFの研究が進んで
2005年には、厚生労働省から化粧品使用の認可がおりています。
それをうけ
EGFは『ヒトオリゴペプチド-1』という呼称で多くの化粧品に含まれるようになりました。
自然界に含まれるEGFの含有量
口内の傷は
比較的早く治るといわれている通り14日で再生します。
その一方で皮膚は28日もかかってしまいます。
それは
口内にふくまれるEGFが再生にプラスに働くからです。
例えば
糖尿病になると口内のEGF分泌量は減少しますので、口内の傷は治りにくいといわれています。
EGFが自然界に含まれている主なものとしては牛乳や母乳、唾液などに比較的多いといわれています。
例えば
初乳中(分娩3~5日後)では15.03μg/100mlも含まれています。
子どもの未熟な腸上皮細胞を成熟させる役割があると考えられています。
EGFがたくさん含まれている天然物の中で、近年有名になってきたものにツバメの巣があります。
ツバメの巣は東南アジアの限られた断崖に生息するアナツバメが唾液を固めて作る巣のことです。
ツバメの巣に含まれるEGFの含有量については
イライザ法という免疫学的測定法で解析した結果、100gの赤いツバメの巣には0.1μg、白いツバメの巣には0.05μg含まれていることがわかりました。
EGFの生産技術
EGFは現在、大量培養が比較的容易である原核生物や大腸菌を用いることがほとんどです。
その他に酵母やブレビバチルス属細菌を用いる手法も知られています。
これらの微生物は自分自身の遺伝情報とは別にプラスミドと呼ばれる外来の環状DNAを体内に保持させることが可能で、プラスミドに任意のDNA配列を載せて微生物の細胞内に入れることで、DNA配列により決定されるアミノ酸配列からなる、ペプチドやたんぱく質を作らせることができるのです。
この微生物を大量培養し、体内に造らせたたんぱく質を様々なな手法を用いて回収・精製すれば、目的の成長因子を大量に得ることができます。
遺伝子操作で製造されたEGFは許可を得ていない他の遺伝子組み換え原料と同様に、食品に配合することができません。
しかしながら
EGFを多く含む、例えば牛乳やツバメの巣などであれば天然素材であるので安心して使うことができるのです。
EGFの作用・効果について
EGFは、ノーベル賞受賞成分して大変知名度のあるものですが
発見されたのは1962年です。
EGFは大変貴重なものとされていて
美容・医療界では薬剤として、または化粧品の成分として使われるようになったのは最近のことです。
それではEGFの作用について話していきましょう。
1、消化性潰瘍治療への応用
EGFの胃潰瘍への応用が尿から分離された、ヒトEGFを用いて行われ、対照薬(塩酸セトラキサート)が治癒率47.9%であるのに対して、ヒトEGFでは73.9%という高い治癒率が報告されています。
それは、EGFの細胞増殖促進作用の効果と考えられています。
2、歯周病への応用
歯周病患者の唾液のEGF濃度を測定した報告があります。
これによりますと、奇勝直後が朝食後、昼食前後、夕食前後より優位に高濃度でした。
それは歯周病を修復しようとする生理作用かもしれません。今後の進展が期待されます。
3、化粧品への応用
加齢に伴うEGFの減少は既にのべた通りですが、皮膚の再生が遅れると、角質層がだんだんと厚くなってきて、肌は老化し、シワが増えていきます。
このためEGF配合の美容液、化粧水、保湿クリーム、保湿ゲルなどの形で供給され、シワの生成予防や改善に使われています。
4、育毛作用
EGFは発毛サイクルにおいてオンとオフを繰り返すスイッチのような役割を演じます。
毛髪の成長周期は、成長期、退行期、休止期の3つの段階があります。
EGFとEGFが結合して働く受容体(EGFR)がその調節因子の一員であることが知られています。
このEGFRは毛の成長開始に必要不可欠であることがわかっています。
さらに
EGFには、育毛作用をもつ体内のペプチドIGF-1(インスリン様増殖因子=Insulin-like Groeth Factor 1)を増やす作用があることが最近明らかになりました。
つまり
EGFは育毛剤開発に極めて重要な役割を演じるのです。
このようにEGFは極めて多彩な応用があるわけですが、EGFをとりすぎても副作用などの心配は全くありません。
それは充分な量のEGFを取り入れると、それをオーバーする量を取りこまないように自然とコントロールする機能を有しているからです。
FGF(線維芽細胞増殖因子)とは?
FGF(Fibroblast Growth Factor)とはEGFと同様、人のカラダの中にあるものです。
表皮に作用するEGFに対し、FGFは真皮にある線維芽細胞という名のコラーゲンを生み出す細胞にアプローチして、成長と増殖を加速させます。
線維芽細胞が活動的に働くとコラーゲンを真皮に保ち、ハリと透きとおるような水分を含んだ肌を作ります。
FGFは年齢に従って低くなりますが、皮膚に塗り付けることで表皮に浸透して、シミやシワ、たるみ、くすみなどの真皮のトラブルに喜ばしい作用をしてくれます。
FGFの仲間は23種類も発見されていて、FGF・1~FGF・23というように番号が付けられて区別されています。
EGFやFGFはコラーゲンやヒアルロン酸の生産促進効果が見込むことができ、化粧品業界では人気のある因子です。
線維芽細胞に限らず中胚葉系および神経外胚葉系の他、内胚葉系や外胚葉系の細胞を含む多種の細胞に作用し、増殖、細胞運動、分化、生存維持に機能しています。
コラーゲンやヒアルロン酸を配合
最近、最も注目されているEGF美容液や化粧水は、EGFと共にコラーゲンやヒアルロン酸を配合している商品が多くなってきました。
コラーゲンはたんぱく質の一種であって、私たちのカラダを構成しているたんぱく質の約3分の1を占めています。
カラダの細胞と細胞のすき間を埋めている細くて長い線維状のもので、細胞の足場として機能をしています。
コラーゲンは細胞の集まっているところには必ずあるもので、細胞と細胞の接着剤として大変重要なたんぱく質なのです。
いわゆる私たちのカラダの細胞をとりまく環境の主役は、コラーゲンであるわけです。
コラーゲンの新陳代謝を高めれば、細胞の新陳代謝が活発にあんり、いつまでも美しい肌を保ち、健康な体が得られるというものです。
また
ヒアルロン酸というのは1934年、コロンビア大学の教授のカール・マイヤー博士らにより牛の眼球に存在するガラス体と言われる部位から抽出されました。
ヒアルロン酸は極めて分子量の大きなムコ多糖で、その水溶液はとても粘度が高く、同一のムコ多糖で結合組織に入り込むコンドロイチン硫酸よりも遥かに高い保水性があるもので、化粧品への応用に注目が集まるようになったのです。
私たちの体内で最も多くヒアルロン酸が含まれているのは皮膚です。
大人では平均7~8g、体の中のおおむね50%を占有しています。
ヒアルロン酸は、全身の細胞をみずみずしく潤し、ミネラルやアミノ酸、ビタミンなどの栄養素を細胞の奥まで浸透させ、肌を滑らかに美しく整え、体質の改善に大きく貢献しています。
しかし
ヒアルロン酸は40代後半から減少をはじめまして、普通の食事だけでは補うことがとても難しい成分でもあります。
コラーゲンとたんぱく質は、皮膚の張りをよくする働きがあり、ヒアルロン酸はその皮膚の潤いをつくってくれるのです。
ヒアルロン酸やコラーゲンに、EGFを配合すると肌の再生がさらに増してきます。